小説と幻想

シロウト小説書き有沢ケイの小説

異世界ストーカー、アーロンの手記(1)

アーロンは、今日も異世界から彼女を見ている。ファンタジー日記文学風味。








 今日もユーナは、最高に可愛かった。あちらでは、今、ショーガツとかいうイベント期間らしい。こちらで言う千年節みたいなものだろう。多くの人が仕事を休み、挨拶廻りや神殿の参拝をしている。ユーナは学生で、もともと学院が閉まっている期間であるので学業は休みなのだが、彼女が任されている家事には終わりはないようで、洗濯やら掃除やらを行っていた。

 家人は、挨拶廻りに行っていて、留守番もしていた。あやつらがいない方が気楽なようで、何やら歌いながらアイロン掛けをしていた。昼食時には、嬉しそうにガレットのような物を焼いてイチゴジャムをべったり塗って食べていた。普段は家人の手前、あまり笑顔を見せることがないので貴重な表情だ。記録に残したかったが、倫理に抵触するため、それはしなかった。

 しかし、あのキモノとかいう晴れ着は良い。近所の娘が着ていた赤と金の複雑な柄のものなど、ユーナにとても似合いそうだ。生地も分厚くて変わっているし、何とか似たものが作れないかやってみたい。着方にもテクニックがあるようだ。覚えるべきだろうか。

 いや、僕が覚えても仕方がないか。淑女の肌に触れるような作業だ、パペットにでもインストールするようコードを書いてみなければ。新たな魔導コードを書くのは心が躍る。これもユーナが僕にくれた仕事だ。彼女には感謝しなければ。ユーナ、僕の可愛いユーナ、僕の運命。この世界にきみがいれば良かったのに。

 今日も日課のハーブの世話と調薬を行った。傷薬20、粉薬5種類を10包、上級水薬を2種類5瓶、特殊水薬1瓶。コリンが協会から薬の提供数を増やせという要望書を持ってきたが、理由が書いてないため突き返す。レシピは渡してあるのに、あいつらラクしすぎだ。儲けてるのを僕が知らないとでも思っているのか。提供単価が高すぎると文句を言ったら、コリンが実際の単価を知って陸揚げされた魚みたいに口をパクパクさせていた。知らされていなかったんだろう。あいつも、いいように使われているな、可哀相に。

 だが、今回は協会には手加減をしないことにする。顔を合わせてなくたって、僕がなんでも知っているってことを彼らは知らなくちゃいけないだろうからね。